祖父が亡くなった後、彼の形見の古い時計を修理した。祖父は生前、その時計をいつも大事にしていて、毎朝丁寧にゼンマイを巻いていた。私が小さい頃、「これは時間じゃなくて、人生を刻むんだ」と話してくれたのを覚えている。

遺品整理で時計を見つけたが、針は止まり、ガラスも割れていた。捨てるのは忍びなく、時計修理の専門店に持ち込んだ。職人さんは「50年前のモデルだけど、丁寧に使われていたね」と言い、1ヶ月かけて修理してくれた。受け取りに行った日、動く時計の秒針に涙が出そうになった。

家に持ち帰り、祖父の写真の横に置いて、毎朝ゼンマイを巻くのが日課に。ある日、時計を見ながら祖父の若い頃の話を母に聞いた。戦争を生き抜き、家族を守るために働いた祖父の人生が、時計の刻む音に重なる気がした。今、忙しい日々の中で、時計の音を聞くと、祖父の「焦らず生きなさい」という声が聞こえるよう。形見はただの物じゃない、祖父の愛そのものだ。