気づいたのは、会社の歓迎会の帰り道でした。幹事を頼まれて、お店を探して、当日の進行も仕切って、二次会の流れもつくって。それなのに電車に乗った瞬間、どっと疲れが出てきて、なんで私こんなに消耗しているんだろうと思ったんです。楽しくなかったわけじゃない。でも、頼まれていないことまで全部引き受けていた自分に、ようやく気づきました。

振り返れば、ずっとそうでした。誰かが困っていると放っておけない。頼まれると断れない。場の空気が悪くなりそうだと、自分が折れることで丸く収めようとする。周囲からは「気が利く」とか「頼りになる」とか言われてきたけれど、その言葉が積み重なるたびに、なんとなく首が締まっていくような感覚がありました。

転機になったのは、仲のいい同僚のひとことでした。「あなたっていつも余裕そうに見えるけど、本当に大丈夫?」と聞かれて、反射的に「大丈夫です」と答えようとした瞬間、自分でも驚くくらい言葉に詰まってしまったんです。大丈夫じゃなかったんだと、そのとき初めてわかりました。

それから少しずつ、断る練習を始めました。最初は罪悪感がすごかったです。「無理です」と言うたびに、相手をがっかりさせたんじゃないかとしばらく引きずっていた。でも不思議なことに、断ったからといって関係が壊れることはほとんどなかった。むしろ、余裕を持って接せられるようになってから、会話が前より自然になった相手もいます。

人間関係は、広さより密度だと最近思うようになりました。誰にでもいい顔をしていたころより、今のほうが、ちゃんとつながれている気がしています。